ハローワークの職業訓練を利用することで現場で役立つスキルを身につけられ、就職に有利になる可能性があります。
とはいえ、どのような内容のコースがあるかや基本情報などを把握していない方も多いでしょう。
職業訓練を有効活用するには、あらかじめ情報を把握しておくことが大切です。
本記事ではハローワークで受けられる職業訓練の内容や身につけることのできるスキル、受講に関する基本条件などについて解説します。
職業訓練とは
職業訓練は、「公的職業訓練(ハロートレーニング)」と言われ、就職に役立つスキルを習得する場です。
コースの期間は様々なので、あらかじめ確認が必要です。
短いものは3ヶ月程度で終わりますが、長期では2年程度かかるコースもあります。
また、失業保険の受給の有無で、以下の2つがあります。
- 公共職業訓練:失業保険を受給している求職者
- 求職者支援訓練:失業保険を受給できない求職者
利用希望する際は、ハローワークにて申し込みを行います。
なお、書類選考や面接などがあるので、必ずしも受講できるとは限りません。
とはいえ、スキルを習得して就職したい方にはおすすめの制度です。
職業訓練を受ける流れ
職業訓練を受ける流れについて把握しておくと、スムーズに準備できます。
ぜひ、チェックしてみてください。
求職の申し込みをする
まず、ハローワークで求職申し込みをします。
求職申し込みの段階で職業訓練を希望すると、コースを選択できます。
スキルや経験、希望する内容を伝え、職業訓練への意欲をアピールしましょう。
コースの詳細に関しては、資料があるので確認してみることをおすすめします。
自治体によって開催しているコースが異なります。
希望する場合は、別の自治体のコースを利用するのも手段です。
書類選考を受ける
職業訓練を受けることが決まったら、書類選考を受けます。
受講申込書をハローワークの窓口に提出すると、書類選考を受けるステップに進めます。
希望のコースを必ずしも受講できるとは限らないので、書類作成も重要です。
とくに、志望動機が重視されるので、入念に準備しておきましょう。
面接・筆記試験を受ける
書類選考に通過したら、面接・筆記試験を受けます。
面接でいかに職業訓練を受ける意欲をアピールするかがポイントとなります。
オリエンテーションに参加する
選考を通過したら、オリエンテーションに参加します。
オリエンテーションには、必ず出席しましょう。
なお、以下の書類を提出します。
- 誓約書
- 受講届
- 通所届など
書類作成にあたり、印鑑を準備しておく必要があります。
オリエンテーションを受けたら、受講指示書もしくは受講推薦書を受け取ります。
給付金の申請を行う
職業訓練に参加後、月に1回給付金の申請を行います。
ハローワークの職業訓練で受けられるコース
ハローワークの職業訓練には、複数のコースがあります。
また、自治体によって開催されている講座が異なります。
代表的な人気のコースをご紹介しますので、参考にしてみてください。
パソコン系
パソコン系は幅広い業種で使えるので、人気があります。
以下のような内容を学ぶことができます。
- パソコンの使い方の基本
- メール・インターネットの使い方
- オフィスソフトの使い方…など
パソコンスキルがあると、仕事の幅が広がります。
Web系
Web系のコースは、IT企業への就職に役立ちます。
以下のようなスキルを身につけることができます。
- プログラミングのスキル
- HTMLやCSSの使い方
- Webデザイン・Web制作
IT企業は増えているので、今後も活用できる人気のコースです。
介護・福祉系
介護・福祉系のコースは、介護関連の仕事をする方におすすめです。
介護関連の仕事は多いので、人気があります。高齢者・障害のある方への支援に関するスキルを身につけられます。
求人案件が多いので、開催される頻度も多いです。
経理系
企業では、経理系の知識が求められるケースがあります。
経理系の知識があると、実践で役立ちます。
経理系のコースでは、以下のような内容を学ぶことができます。
- 売上や利益の把握
- 経費の取り扱い方
- 税金や社会保険料について
- 給与の計算
- 決算書類…など
なお、業務に活かしやすい簿記の試験対策も行えます。
経理について知識を深めたい場合は、経理系のコースを選択してみると良いでしょう。
金融系
金融系では、以下のような業種で役立つスキルを学べます。
- 金融業界
- 不動産業界
- 銀行
- 保険
- 証券
上記業種で役立つ、ファイナンシャル・プランニング技能士や宅地建物取引士の試験対策もできます。
就職に有利になるので、資格取得も視野に受講してみると良いでしょう。
機械・電気系
機械・電気系の職業訓練は、以下の業種に携わる方におすすめです。
- 建設業
- 土木現場
- 配送業
機械関連の使い方に関するスキルを身につけられます。
上記業種に携わりたい方に人気です。
美容系
美容系のコースは、ネイリストなどの美容関連の仕事に携わる方におすすめです。
美容系は需要が高まっており、求人案件も多数あります。
美容系のコースでは、以下のような内容を身につけられます。
- 実技スキル
- 接客マナー
- コミュニケーションスキル
美容系の仕事を行う上で必要なスキルを学べます。
職業訓練を受けるメリット
職業訓練を受ける最大のメリットはスキルを身につけられることですが、失業手当など金銭面に関するメリットもあります。
メリットを把握し、利用すべきか判断すると良いでしょう。
職業訓練を受けるメリットについて解説します。
失業手当の受給期間の延長ができる可能性がある
職業訓練は、失業保険の給付と並行して受けられます。
条件によって異なりますが、職業訓練を受けることで失業手当の受給期間を延長できる可能性があります。
また、職業訓練を受けていれば、自己都合の退職であっても、失業手当の給付制限がありません。
通常、自己都合の場合給付制限期間が3ヶ月あるので、すぐに支給されるのは魅力的でしょう。
受講手当・交通費を受け取れる
職業訓練を受ければ、受講手当・交通費を受け取ることができます。
受講手当は以下のようになっています。
- 受講手当:日額500円
- 日数:最大40日分
- 支給合計:2万円
- 交通費:上限が1ヶ月当たり4万2,500円
お金をもらいながら勉強できると考えると、魅力的な制度と言えるでしょう。
失業保険の受給手続きを代行してもらえる
退職後、再就職するまで失業保険の給付を受けられるケースがありますが、手続きが負担になる方もいます。
失業保険の受給には毎月ハローワークにて面談が必要です。
職業訓練を受講していれば、訓練校に失業保険の受給手続きを依頼できます。
そのため、ハローワークへ通う必要はありません。
職業訓練受講給付金をもらえるケースがある
職業訓練受講給付金受給の対象の場合、支給を受けながら職業訓練に参加できます。
職業訓練受講給付金は、以下のような方が対象です。
- ハローワークへ求職の申込み済み
- 雇用保険を受給していない
- 収入が月8万円以下
- 世帯年収300万円以下
- 世帯資産が300万円以下
- 土地や建物の保有が現在住んでいる所のみ
- 職業訓練の8割以上出席
- 同世帯に給付金受給者がいない
- 過去3年以内に給付金の不正受給がない
条件を満たしている場合、職業訓練受講給付金をもらえるのでお得です。
ただし、条件は非常に厳しく、講座に一度でも遅刻・早退・欠席すると支給対象外となります。
正当な理由があれば8割まで休めるものの、証明書の提出を求められます。
職業訓練に関する注意点
職業訓練はお金をもらいながら学べる魅力的な制度ですが、利用する際は注意点があります。
利用することで、就職時期が遅れたり、経済的に困窮するケースもあります。
職業訓練に関する注意点について解説しますので、ぜひチェックしてみてください。
就職までに時間がかかる
職業訓練を受講すると以下のような状況になり、就職までに時間がかかります。
- 職業訓練の選考に時間がかかる
- 職業訓練の合否の結果待ち時間が発生する
- 講座が最短3ヶ月以上と期間が長い
すぐに就職したい場合、職業訓練が妨げになる可能性があります。
経済面で困る可能性がある
職業訓練は失業手当の受給と並行できるとはいえ、十分な収入を得ることができません。
失業手当は前職の給与の2/3なので、生活が困難になるケースがあります。
なお、アルバイトなども不可となっています。
失業手当のみで生活を続けるのは厳しい状況になる可能性があるでしょう。
必ずしも現場で活かせるとは限らない
職業訓練は複数開催されていますが、以下の要素により内容やレベルが異なります。
- 講師
- 受講コース
- 地域
地域により、開催講座の内容が異なります。
また、講師はパートとして雇われているケースもあり、必ずしも現場で活用できるスキルを持っているとは限りません。
場合によっては、満足のスキルを身につけられない可能性もあるでしょう。
職業訓練コースの探し方
職業訓練は、受講終了後1年間その他のコースに参加できません。
コースの変更もできないので、慎重に選ぶ必要があります。
あらかじめ情報収集しておきましょう。職業訓練コースの探し方についてご紹介します。
都道府県のホームページを確認する
職業訓練の情報は、都道府県のホームページに記載されています。
また、応募時期も様々なので、ホームページを確認しておきましょう。
ハローワークで資料を受け取る
ハローワークでは訓練機関に関する資料をもらえます。
都道府県別に職業訓練の情報を得られるので、相談してみると良いでしょう。
また、県外のコースの受講も可能です。
説明会・見学会に参加する
職業訓練に関する説明会・見学会に参加することで、リアルな情報を得られます。
説明会・見学会に関する情報は、ハローワークにある資料から確認できます。
まとめ
「公的職業訓練」(ハロートレーニング)では、就職に役立つスキルを習得することができます。
スキルが不十分で希望の業種に就職できない方にとって、お金をもらいながらスキルを身につけられるのは魅力的です。
職業訓練には様々な種類があり、自治体によっても開催講座の内容が異なります。
他県の講座にも参加可能なので、通える範囲で幅広く情報収集すると良いでしょう。
ただし、職業訓練を受講することで、就職時期が遅れるなどのデメリットもあります。
メリット・デメリットを把握した上で、受講すべきか判断しましょう。